名前を呼ばれ、熱いキスを受けると心が満たされていくカリンヌ。
初めての温かい感覚に酔いしれ、バルテスと呼び返すとうっとりとした視線で見つめます。
バルテスがそっと頬を挟み引き寄せると、それを合図に再びキスをする2人。
馬車はカイェン邸の別荘に到着します。
すると出迎える使用人の数に圧倒され、カリンヌは顔をこわばらせました。
それを察したバルテスは大丈夫だと言ってカリンヌの手を取ります。
バルテスに言われると不思議とその通り大丈夫だと思え、カリンヌは安心した気持ちになるのでした。
そこにカイェン邸の執事たちの総括であるテンが挨拶をしてきました。
女性が執事長であることに内心驚きつつ、カリンヌはよろしくと挨拶を返します。
早速中に案内されますが、別荘と言うには大きすぎる程立派な屋敷にカリンヌは驚きます。
テンは寝室は2階だと言って螺旋状の階段を登って行きます。
あとに続くとまずはバルテスの寝室に案内されました。
そっと自分のベッドに二テンスを寝かせると、バルテスはカリンヌにここで休むようにと言います。
そして自分は報告に向かうと言うと、長旅の疲れを心配するカリンヌ。
気遣ってくれるのかと優しく返すバルテスですが、その姿を見るなりテンは、バルテスにこのような柔らかな一面があったのかと愕然とします。
テンの中では神経質で、何かあれば剣を抜くことも辞さないバルテス。
これまでにこの様な笑顔を見たことさえなかったのです。
しかし、報告が終わったらすぐに戻ると言ってテンを振り返るバルテスからは、その笑顔はすっかり消えていたのでした。
ところで…と、テンに対し、なぜ皇帝陛下は自分たちがここに到着したことを知っているのかと聞くバルテス。
陛下なりに調べたのでしょうと答えるテンは、宴会が始まる前にカリンヌも連れて来れば欲しいものを授けると言っていた事を伝えました。
却下すると言うバルテスに、その場合は反逆者とみなし拘束すると言っていたことも付け加えます。
好きにするが良い、そう言って他に報告はあるかと言うと「影」から「あの方を見つけた」と報告が入っていることを告げます。
するとバルデスは表情を引き締め、執務室で聞くと言うのでした。
執務室の椅子に腰掛けるバルテス。
左右にはテンとディポールと言う影が控えます。
バルテスの前に跪く若い影、シュリーにカリンヌについての報告を促すと、年月が経過していることから覚えている者がいなかったと言います。
そして、当時を知る3人のメイドうちの2人が既にこの世を去っていると報告するのでした。
訝し気な表情を見せるバルテス。
シュリーは、他にも気になる点が複数あると言います。
では、残りの1人を呼べと言うと、なんとシュリーの接触後にティリアンによって手を回されたようですと言いました。
曖昧な物言いのシュリー。
バルテスは次回からはもっとしっかり仕事を行う様にと言うと、ディポールにこの件を改めて調べる様にと命じました。
それはそうと・・
俺が3年前に会った女を見つけたそうだな?
バルテスがいよいよ核心に迫ると、シュリーは言うか言わまいか、心の中で葛藤します。
(口を開けば、もう後戻りは出来ない)
進むか踏みとどまるかを思考の中で繰り返すシュリー・・
頭の中にはある女性の姿が思い浮かびます。
その女性は、自分も人間らしく生きてみたいと若いシュリーに協力を求めたのです。
それを思い起こすやいなや、パースン伯爵家の令嬢、イベット嬢ですと嘘の情報を伝えるシュリー。
(もう、引き返せない―)
イベット・パースンと言う名に聞き覚えの無いバルテスは、その様な娘がいたのかと聞きます。
冷や汗をかき、俯いたまま肯定し、伯爵の婚外子であることを伝えるシュリー。
それを聞くなり、一族の間ではきっとひどい扱いを受けて来たことだろうと考えるバルテス。
それゆえにあの夜もあんな風にさまよっていたのではないか・・・
バルテスは少し黙ると、イベット・パースンも宴に参加するのかとシュリーに聞きます。
すると一度もその様な宴には顔を出したことがないと答えるシュリー。
バルテスは一度伯爵も同伴の上、イベットに会ってみると言います。
するとテンは日取りをきめると言ってお辞儀をするのでした。
バルテスは1人、パースン家に関しても良い噂を聞いたことが無いと考え始めます。
そのためもし宴でイベットに出会えば、彼女は自分に救いを求めるのではないか・・
ならば話は早い―
(そして口止めも必要なことだろう)
更にバルテスはディポールに、ティリアン子爵についての調査はどうなっているのかと尋ねます。
ディポールは報告書を作成しましたと答えます。
それに対し無いかと尋ねるバルテス。
するとディポールは鋭い表情で、簡単に闇に葬れるほどありますと答えます。
すると、カリンヌの為に暫くは生かしておくものの、いつでも実行できるように手はずを整えておくようにと言うのでした。